原価差異の分析②|50代の資格挑戦・学習記録 #66

賃金、労働時間の最適化を目指す──

今回学んだのは、直接労務費差異の分析である。

前回は、直接材料費差異を「価格差異」と「数量差異」に分けて分析した。

直接労務費についても考え方は同じである。

標準直接労務費と実際直接労務費の差額を求めるだけでなく、その差が、

「賃率の違い」によって生じたのか、
「作業時間の違い」によって生じたのか、

まで分析していく。

直接労務費差異は、

「賃率差異」と「時間差異」

の2つに分けて考える。



😸直接労務費差異の分析

CASE 65では、次のデータが与えられている。

製品1個あたりの標準直接労務費は、

@20円 × 3時間 = 60円

である。

一方、当月の実際直接労務費は、

@25円 × 250時間 = 6,250円

だった。

まずは、当月の標準直接労務費を求める。

ここで注意したいのが、直接労務費は加工費だということ。

そのため、当月投入量は単純な製品数量ではなく、加工進捗度を考慮した完成品換算量で求める。

今回の生産データでは、

月初仕掛品:20個(加工進捗度50%)
完成品:100個
月末仕掛品:40個(加工進捗度50%)

なので、加工費の当月投入量は、

100個 + 40個×50% − 20個×50%
=100個+20個−10個
=110個

となる。

したがって、当月の標準直接労務費は、

@60円 × 110個 = 6,600円

である。

実際直接労務費は6,250円なので、

6,600円 − 6,250円 = 350円

となる。

つまり、

直接労務費差異(総差異):350円の有利差異

である。

実際にかかった直接労務費が標準より350円少なかったため、全体としては有利差異となった。



😸差異分析のボックス図

直接労務費差異も、前回の直接材料費差異と同じようにボックス図で考えることができる。

縦軸が賃率、横軸が直接作業時間である。

今回のデータを整理すると、

標準賃率:@20円
実際賃率:@25円

そして標準直接作業時間は、製品1個あたり3時間なので、

3時間 × 110個 = 330時間

となる。

これに対して実際直接作業時間は250時間だった。

したがって、

標準:@20円 × 330時間 = 6,600円
実際:@25円 × 250時間 = 6,250円

となる。

ボックス図を書くときのポイントは、

実際データは外側、標準データは内側

に記入すること。

特に今回のように、標準直接作業時間330時間のほうが実際直接作業時間250時間より大きくても、

標準直接作業時間は必ず内側(左側)

に書く。

数字の大小ではなく、「標準を内側、実際を外側」と覚えておくのが良さそうだ。



😸賃率差異とは

直接材料費差異を価格差異と数量差異に分けたように、直接労務費差異もさらに分析する。

まずは賃率差異である。

賃率差異とは、標準よりも高い、あるいは安い賃率の工員が作業したことによって生じる差異だ。

例えば、本来なら一般の工員でできる作業を賃金の高い熟練工が担当すれば、その分だけ人件費が高くなる。

計算式は、

(標準賃率 − 実際賃率)× 実際直接作業時間

となる。

CASE 65では、

(@20円 − @25円)× 250時間
= △1,250円

したがって、

賃率差異:1,250円の不利差異

である。

標準では1時間あたり20円を予定していたのに、実際には25円かかっている。

1時間あたり5円高くなり、それが実際の250時間分発生したため、

5円 × 250時間=1,250円

の不利差異となったわけだ。



😸時間差異とは

もう一つが時間差異である。

時間差異とは、標準よりも多くの作業時間を費やした、あるいは少ない作業時間で済んだことによって生じる差異だ。

計算式は、

標準賃率 ×(標準直接作業時間 − 実際直接作業時間)

となる。

今回の標準直接作業時間は330時間、実際直接作業時間は250時間なので、

@20円 ×(330時間 − 250時間)
=@20円 × 80時間
=1,600円

したがって、

時間差異:1,600円の有利差異

である。

330時間かかると想定していた仕事を、実際には250時間で終えることができた。

予定より80時間少なく済んだため、その分だけ有利差異が発生したということである。



😸賃率では不利、時間では有利

ここまでの差異をまとめると、

* 賃率差異:1,250円の不利差異
* 時間差異:1,600円の有利差異

となる。

差し引きすると、

1,600円 − 1,250円 = 350円の有利差異

となり、最初に求めた直接労務費差異(総差異)350円と一致する。

今回のケースはなかなか面白い。

実際賃率は標準より高かったため、賃率だけを見ればコストアップしている。

しかし、予定していた330時間に対して250時間で作業を終えており、作業時間を大幅に短縮できた。

その結果、

賃率上昇によるマイナスより、作業時間短縮によるプラスのほうが大きかった

ため、最終的には350円の有利差異となったのである。



😸タテは賃率、ヨコは時間

直接労務費の差異分析では、ボックス図の意味を理解しておくことが重要だ。

タテは賃率、ヨコは直接作業時間。

そして、

賃率差異=賃率のズレ × 実際直接作業時間

時間差異=標準賃率 × 作業時間のズレ

と考える。

前回の直接材料費差異と並べてみると、かなり似ている。

直接材料費では、

価格 × 数量

直接労務費では、

賃率 × 作業時間

と考えればよい。

つまり、

価格差異 ↔ 賃率差異
数量差異 ↔ 時間差異

という対応関係になっている。

この関係がわかれば、公式をただ暗記するよりも覚えやすそうだ。



😸今回の学び

今回学んだ直接労務費差異では、単に「予定より人件費が高かった・安かった」だけではなく、その原因まで分解して考える。

今回のCASE 65では、

標準直接労務費:6,600円
実際直接労務費:6,250円
総差異:350円の有利差異

だった。

しかし、その中身を見ると、

賃率差異:1,250円の不利差異
時間差異:1,600円の有利差異

となっている。

全体では350円のコスト削減に成功しているが、「賃率は予定より高かった」という改善ポイントも見えてくる。

反対に、作業時間については予定より80時間も短縮できている。

こうして差異を原因別に分けることで、

「結果としていくら違ったか」から、「なぜ違ったのか」へ

一歩踏み込んで分析できる。

これが原価差異分析の意味なのだろう。

前回の直接材料費に続いて、今回の直接労務費でも、標準原価計算が単なる原価計算ではなく、現場の効率や改善点を見つけるための仕組みであることが少しずつ見えてきた。

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