直接原価計算|50代の資格挑戦・学習記録 #75

固定費は、売れなくても発生する──

今回から「標準・直接原価計算編」の第13章、直接原価計算に入る。

前章では標準原価計算について学んできたが、ここからは原価を「変動費」と「固定費」に分けて考えていく。

直接原価計算を使うと、

「製品を何個売れば利益が出るのか」

という、生産・販売量と利益の関係が見えやすくなる。

まずは、これまで学習してきた「全部原価計算」と比較しながら、その考え方を整理していく。



😸変動費と固定費

費用は、生産・販売量との関係から大きく、

* 変動費
* 固定費

の2つに分けることができる。

変動費とは、製品の生産・販売量に比例して発生する費用である。

たとえば材料費なら、製品をたくさん作れば、それだけ多くの材料が必要になる。

生産量が増えるほど材料費も増え、生産量が0なら基本的には材料費も0になる。

つまり、

生産・販売量が増える → 変動費も増える

という関係になる。

一方の固定費は、製品の生産・販売量に関係なく一定額が発生する費用である。

代表的なものが、機械などの減価償却費である。

製品をたくさん作っても、まったく作らなくても、減価償却費は一定額が発生する。

つまり、

生産・販売量が0でも → 固定費は発生する

ということである。

図にすると、変動費は生産・販売量に比例して右肩上がりになるのに対し、固定費は生産・販売量にかかわらず横一直線になる。

この違いが、直接原価計算を理解するうえで重要になる。



😸全部原価計算と直接原価計算

これまでに学習してきた原価計算では、原価を変動費と固定費に分けずに計算してきた。

このような計算方法を**「全部原価計算」**という。

CASE 68では、次の条件が与えられている。

* 製品1個あたりの販売単価:@200円
* 製品1個あたりの原価:@130円
* うち変動費:@60円
* 固定費の年間発生額:280円

まず、これまでどおり全部原価計算で考えてみる。

製品1個あたりの原価を@130円として計算するため、1個販売した場合は、

売上高
@200円 × 1個 = 200円

原価
@130円 × 1個 = 130円

利益
200円 − 130円 = 70円

となる。

2個なら、

400円 − 260円 = 140円

3個なら、

600円 − 390円 = 210円

となる。

したがって全部原価計算では、

生産・販売量 売上高 原価 利益
0個 0円 0円 0円
1個 200円 130円 70円
2個 400円 260円 140円
3個 600円 390円 210円

となる。

一見すると、とても分かりやすい。

1個売るたびに70円ずつ利益が増えていく。

しかし、ここには問題がある。



😸製品が0個でも固定費は発生する

全部原価計算では、製品を1個も生産・販売しなければ、

原価0円
利益0円

となっている。

しかし、実際にはそうならない。

減価償却費のような固定費は、製品を作ったかどうかとは関係なく発生するからである。

CASE 68では、固定費の年間発生額は280円である。

つまり、製品を1個も生産・販売しなくても280円の固定費は発生する。

そのため、生産・販売量と利益の関係を考えるのであれば、この280円を無視することはできない。

全部原価計算では固定費も製品原価に含めて計算するため、こうした固定費の性質が見えにくくなってしまう。

そこで登場するのが直接原価計算である。



😸直接原価計算とは

直接原価計算では、製造原価を、

変動費と固定費

に分けて考える。

そして、

変動製造原価のみを製品原価として集計し、固定製造原価は発生額を全額その期間の費用として計算する。

これが直接原価計算の大きな特徴である。

CASE 68では、製品1個あたりの変動費が@60円なので、製品原価として計算するのはこの60円だけになる。

一方、固定費280円は、生産・販売量に関係なく全額をその期間の費用として計算する。

これによって、製品を何個販売すれば固定費を回収でき、そこから利益が出るのかが見えやすくなる。



😸直接原価計算で利益を計算する

では、CASE 68を直接原価計算で計算してみる。

0個の場合

売上高は0円。

変動費も0円だが、固定費280円は発生する。

したがって、

0円 − 280円 = △280円

280円の損失となる。

1個の場合

売上高は、

@200円 × 1個 = 200円

変動費は、

@60円 × 1個 = 60円

ここに固定費280円を加えると、原価は340円。

したがって、

200円 − 340円 = △140円

となる。

2個の場合

売上高は400円。

変動費は、

@60円 × 2個 = 120円

固定費280円を加えると、原価は400円となる。

したがって、

400円 − 400円 = 0円

ここでちょうど売上高と原価が一致する。

3個の場合

売上高は600円。

変動費は、

@60円 × 3個 = 180円

固定費280円を加えると、原価は460円。

したがって、

600円 − 460円 = 140円

の利益となる。

まとめると、

生産・販売量 売上高 変動費 固定費 利益
0個 0円 0円 280円 △280円
1個 200円 60円 280円 △140円
2個 400円 120円 280円 0円
3個 600円 180円 280円 140円

となる。

全部原価計算では1個販売した時点ですでに70円の利益が出ていた。

しかし直接原価計算では、固定費280円を回収しなければならないため、1個ではまだ140円の損失である。

2個販売してようやく利益0円となり、3個以上販売することで利益が発生することが分かる。



😸「何個売れば利益が出るか」が見えてくる

今回のCASE 68で重要なのは、直接原価計算によって、

生産・販売量と利益の関係が分かりやすくなる

という点だと思う。

製品1個を販売すると200円の売上が発生する。

そのために必要な変動費は60円なので、

200円 − 60円 = 140円

が固定費の回収と利益に回ることになる。

固定費は280円なので、

280円 ÷ 140円 = 2個

2個売れば、ちょうど固定費を回収できる。

そして3個目から利益が発生する。

こうして考えると、

「次期に製品を何個売れば、いくらの利益を獲得できるのか」

という会社の利益計画を立てやすくなる。

これが直接原価計算の大きなメリットである。



😸今回の学び

今回は「直接原価計算」の基本的な考え方を学んだ。

ポイントは、

変動費=生産・販売量に比例して発生する費用

固定費=生産・販売量に関係なく一定額が発生する費用

という違いである。

これまで学習してきた全部原価計算では、変動費と固定費を分けずに製品原価を計算する。

一方、直接原価計算では、

変動製造原価のみを製品原価とし、固定製造原価はその期間の費用とする。

その結果、

「何個売れば固定費を回収できるのか」

「何個売れば利益が出るのか」

「販売量が増えると利益はいくら増えるのか」

といった、生産・販売量と利益の関係が見えやすくなる。

これまで原価計算というと、「作った製品の原価はいくらか」を求めるものという印象が強かった。

しかし直接原価計算では、その数字を将来の利益計画に使うという視点が加わってくる。

単に過去の原価を計算するだけではなく、

「これから何個売れば、どれだけ儲かるのか」

を考えるための原価計算。

ここから、原価計算が経営判断につながっていくようで面白くなってきた。

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