許すのが困難なら「許してやる」と考えてみる

人を許すということは、時として大変困難な課題だ。特に深く傷つけられた経験がある場合、その人を許すことは精神的に大きな負担となる。しかし、許せない感情を抱き続けることは、自分自身を苦しめ続けることにもなってしまう。

そこで提案したいのが、「許してやる」という考え方だ。これは上から目線の表現のように聞こえるかもしれないが、実は自分を解放するための有効な心理テクニックといえる。

「許す」という行為に対して心理的な抵抗がある場合、あえて「許してやる」という表現を使うことで、その行為がより実行しやすくなる。

この「許してやる」という姿勢には、相手に対する優位性の感覚が含まれている。それは必ずしも良いことではないかもしれないが、許すという行為自体を実現するための一時的な足場として機能させる。言わば、完全な赦免に至るまでの通過点として捉えることができるだろう。

制心瞑想の観点からすれば、これは相手の中心を制するのではなく、自分自身の心を制する技術といえる。怒りや憎しみの感情に振り回されることなく、それらをコントロールする術を身につけることは、精神的な成長において重要な要素となる。

最終的には、「許してやる」という段階を経て、純粋な意味での「許す」という境地に至ることが理想だろう。しかし、そこに至るまでの過程として、この「許してやる」という考え方を活用することは、現実的かつ効果的なアプローチとなるはずだ。

このように、完璧を求めるのではなく、段階的なアプローチを取ることで、困難な課題である「許す」という行為を、より実現可能なものとすることができる。これは武術における段階的な修練と同様、一歩一歩着実に進んでいく方法といえるだろう。

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