人を動かす言葉の紡ぎ方
人を動かす言葉──それは退屈の対極にあり、心(欲望の束)を刺激するプロトコル
人の心を動かす言葉とは、決して辞書に載っているような「美しい言い回し」や「語彙力モンスター的な文」ではない。むしろ、人の心を揺さぶる言葉というのは、焼きたてのパンの香りのように、ふいに、鼻先をかすめる。それは生きている言葉だ。命が通っている。つまり、カッコつけた瞬間に死ぬ。(つまりこの記事は冒頭で死んでいる)
言葉は魔法だ、と言いたいところだが、たいていは呪文を間違えてカエルになる。いや、相手をカエルにするつもりが、なぜか自分が全裸で雑踏に立っているようなこともある。勘違いという名の強力な魔力だ。だからこそ、言葉を紡ぐには技術だけでなく、真心と、少しの照れと、さらに少しの図々しさが必要なのだ。
たとえば、誰かを励まそうとして「頑張れ」と言った瞬間、その人の目が魚のように虚ろになることがある。これは「頑張れ」が悪いのではない。タイミングが悪いか、相手がすでに頑張りすぎてるか、あるいはその人にとって「頑張れ」は呪いの言葉なのだ。「大丈夫、どうせ人間全員いつかは死ぬよ」と言ったほうが、なぜか元気になることもある。つまり、人は理屈ではなく、空気と文脈と微妙な感情で動くのである。ややこしい生き物だ。
言葉を磨くというのは、表現を飾り立てることではなく、むしろ削ぎ落としていく作業に近い。あれもこれも言いたくなる。だって自分が正しいと思い込んでいるんだから。しかし人は、「自分が正しい」と言う人に、なぜか鼻白む性質がある。言葉でマウントを取ろうとした瞬間、あなたは象牙の塔からバナナの皮を踏んで転げ落ちる。
本当に人を動かすのは、その人が気づいていない、あるいは常に感じている、心の奥に潜む欲望を刺激する言葉だ。その人に興味がなければ、どんな名言や名文も刺さることはない。だから、インパクトのある短文や興味を惹くストーリーでまず巻き込む。相手の立場に立って言葉を探す時間は、そのまま相手の人生に敬意を払う時間でもある。相手の心の奥まで想像できれば、これは意外と伝わる。むしろ、それがすべてだと言ってもいい。
「どうすれば人を動かせるか?」という問いの答えは、「まず、あなたが動くこと」だ。動いた人間の言葉には、なぜか重みがある。たとえ口下手でも、棒読みでも、説得力がある。なぜなら、その人自身が燃え盛る炎の中から拾ってきた言葉だからだ。人は、燃えた跡のある言葉に惹かれる。経験に勝る説得力はない。
最後に言っておこう。人を動かす言葉の極意は、意外とシンプルである。「この人、なんか好きかも」と思われること。好きな人の言葉は、なぜか素直に聞けてしまう。つまり、あなたがまず「聞く力」と「笑う余裕」と「ちょっとしたボケ」を持っていること。言葉の力とは、そういう人柄のにじみ出た空気ごと、伝わっていくものなのだ。
だから今日も、勇気を出して言葉を紡ごう。多少スベってもいい。サムくてもいい。むしろ、その方が人間味がある。あなたの言葉が、誰かの人生をちょっとだけ変えるかもしれないのだから。
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