武術家が学ぶ材料費の計算|原価計算・簿記学習 #8

同じ材料でも値段は変わる──

工業簿記を学んでいると、「材料費」といっても単純に数量を掛ければ終わりではないことが分かってくる。今回学んだのは、実際に消費した材料費をどのように計算するのかという考え方だ。

材料費は、

材料費=消費単価×消費数量

で求められる。

しかし、ここで疑問が生まれる。

「消費単価はいくらなのか」「消費数量はどう求めるのか」である。

例えば今回のケースでは、月初に木材が20枚あり、単価は1枚10円だった。その後、当月に80枚を1枚15円で購入している。そして当月中に90枚を消費した。

問題は、90枚を使ったときに、その材料をいくらで評価するのかという点だ。

まず学んだのが先入先出法である。

先入先出法とは、先に購入した材料から先に使ったと考える方法だ。

今回の場合、最初にあった20枚(1枚10円)を先に使い切り、その後に購入した80枚(1枚15円)のうち70枚を使用したと考える。

そのため材料費は、

10円×20枚+15円×70枚

となり、合計1,250円になる。

古い材料から先に使うと考えるので、在庫として残るのは後に購入した材料になる。

一方、総平均法という方法もある。

総平均法では、期間中に存在した材料の総額を総数量で割り、平均単価を求める。

今回の場合、

(10円×20枚+15円×80枚)÷(20枚+80枚)

となり、平均単価は14円になる。

そして消費した90枚にこの平均単価を掛けるため、

14円×90枚

で材料費は1,260円となる。

同じ材料を90枚使ったにもかかわらず、計算方法によって材料費が1,250円になったり1,260円になったりするのは興味深い。現実には同じ木材を使っているのに、会計上は評価方法によって金額が変わるのである。

武術でも似たようなことがある。

同じ動きを見ても、観る人によって解釈が異なることがある。観られる身体は一つしかないにも関わらず、だ。簿記でも現実の材料は同じだが、それをどのようなルールで捉えるかによって数字の表れ方が変わるのだと感じた。

次に学んだのが消費数量の求め方だ。

消費数量には継続記録法と棚卸計算法がある。

継続記録法は、材料を購入したときだけでなく、使ったときにもその都度記録する方法である。材料元帳に払出数量を記入していくため、その数量を見れば消費数量が分かる。

この方法の利点は、常に在庫数を把握できることだ。また月末の実地棚卸と比較することで、紛失や破損などによる棚卸減耗も把握できる。

その反面、材料を使うたびに記録しなければならず手間がかかる。

一方の棚卸計算法は、購入した数量だけを記録し、消費した数量は記録しない。

そして月末になってから、

月初数量+当月購入数量−月末実地棚卸数量

によって消費数量を求める。

記録の手間は少ないが、月末になるまで在庫数が分からない。また棚卸減耗も把握しにくいという欠点がある。

こうして見ると、工業簿記は単なる計算ではなく、「どこまで正確に管理したいか」と「どれだけ手間をかけられるか」のバランスを取る学問でもあるように感じる。

武術でも、日々の稽古記録を細かく付ける人もいれば、ほとんど記録など取らない人もいる。前者は後進に伝えるときに役立つが面倒で、後者は楽だが、いざ伝えたい時に困難かもしれない。

材料管理も同じである。

数字の計算を学びながら、管理とは何かという本質も少しずつ学んでいる気がする。

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