60歳を過ぎても強くなり続ける先輩
私には、60歳を過ぎてもなお進化を続けている武道の先輩がいる。年齢を重ねることが衰えを意味するどころか、むしろ年々その動きには深みと鋭さが増しているようだ。若い頃のような力任せの技はもう見られない。だがその代わりに、磨き抜かれた「間」と「気」の精度が、若者との実戦を可能としている。ひとつの所作、一歩の運び、わずかな眼差しの変化にさえ、対戦相手の意識は揺さぶられるだろう。
この先輩を見ていると、「老い」とは肉体的な衰えではなく、精神の停滞なのではないかとすら思わされる。現役時代よりも稽古の量は少ないかもしれない。しかしそのひとつひとつの稽古に込める集中力と観察力は、若手の何倍にもなるだろう。雑に汗をかくのではなく、丁寧に感覚を研ぎ澄まし、身体の内部で何が起きているかを常に見つめている。そこには、ただ強さを追い求めるだけではなく、「どう在るべきか」を問い続ける姿勢がある。
多くの人が、年齢を理由に挑戦をやめてしまう。しかしこの先輩は、年を重ねることをむしろ武器に変えている。若い頃は見えなかったものが、今は見えるようになっているようだ。焦って力に頼っていた頃には掴めなかった感覚が、今では自然に身体に満ちてくるという。目に見えない「気」を扱う感性は、経験と内省を重ねることでしか育たない。そうした見えない力こそが、60歳を超えてなお、先輩を進化させ続けているのだろう。
その背中を見て、私もまた思う。強さとは若さの特権ではない。生き方そのものだ。もうすぐ私も50歳になる。時間と共に滲み出てくる深い強さを目指して、私もまた歩みを止めずにいたい。
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(武術気功健康教室|大阪府四條畷市)