武術では「今ここ自分」の強さが全て
ssakamoto武術における強さとは、技の派手さでも、見た目の格好良さでも、身体能力の高さでも、知識量の多さでも言葉の巧さでもない。ましてや他人の話などどうでも良い。
究極的には「今ここ」に存在する自分自身の総合力しか問われない。過去の栄光や失敗、未来への不安や期待は、一瞬の攻防の中では何の役にも立たない。
相手との立ち合いは常に「今」であり、自分の技もまた「今」しかないからだ。だからこそ武術は、技術以前に「存在の質」を問う。
気が散れば身体は鈍り、身体が鈍れば動きは遅れる。逆に、気を一点に集中し、余計な考えが消えたとき、人は驚くほど速く、静かに、しなやかに動くことができる。
そこにあるのは特別な力ではなく、本来備わっている生命力そのものだ。武術の修行とは、その生命力を濁らせる雑念や緊張を削ぎ落とし、「今ここ自分」に立ち返り続ける訓練である。
技を磨くことも重要だが、技が機能するのは気と身体が一致しているときだけだ。どれほど練習した技でも、意識が未来や過去に飛んだ瞬間に間に合わなくなる。
生きた動きは常に刹那のなかにある。だからこそ本当に強いのは、どんな状況にあっても動揺せず、過剰に身構えず、ただ静かな集中のまま今この瞬間に立つ者だ。
武術とは、敵を倒す力を養う前に、散りやすい自分の心を制し、心身の在るが儘の、自然な力を引き出す道といえる。
「今ここ自分」の強さとは、何も付け加えず、何も誇張せず、ただ純粋に生きる力をそのまま発揮すること。その瞬間に立てる者こそ、真に強い。
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