武術に学ぶ無理無駄の省き方
日常において、我々はしばしば「無理」や「無駄」を抱え込む。過剰な力み、不自然な動き、目的に対して不適切な手段──それらはすべて、成果を遠ざける原因となる。武術は、まさにこの「無理」と「無駄」を削ぎ落とすための知恵と技術の宝庫である。
武術における技の洗練とは、派手な動きをすることではない。むしろ、いかに少ない動作で、いかに自然体で、相手の力を受け流し、自らの力(体重と勢い:ベクトル)を正確に伝えるかという点にこそ、真の価値がある。構えを観れば、その人の無駄がわかる。歩き方や身体の使い方に、無理が現れる。だからこそ、私は口を酸っぱくして言う。「力を抜いて気を入れよう」「もっと小さく動こう」「もっとリラックスして自然に立とう」と。
この「省く」という意識は、武術を離れた場面でも応用がきく。たとえば、仕事の場において、過剰な手順や不必要な気遣いは、チームの流れを鈍らせる。コミュニケーションにおいても、要点を押さえた簡潔な言葉のほうが、回りくどい説明よりも伝わる。大切なのは、自分が何に向かっていて、そのために本当に必要なものが何かを見極める能力である。
武術では、自分の身体に訊くことが求められる。重心がズレていないか、呼吸は自然か、動きに不協和音がないか。こうした細部への気づきが、最終的には大きな違いを生む。無理をしないからこそ、長く続けられる。無駄がないからこそ、一瞬にして勝負が決まる。
現代社会は、情報も物事も過多である。その中で、いかに自分の芯を保ち、不要なものをそぎ落とすか。それはまさに、武術が何百年にもわたり磨いてきた生き方の技術なのだ。無理なく、無駄なく、自分らしく。そうした在り方を、我々は武術から学ぶことができる。
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(武術気功健康教室|大阪府四條畷市)