自慢や自画自賛が嫌われる理由
ssakamotoこれには、人間の心理や社会性に深く関わる理由がある。多くの人は、他人の成果や能力そのものを嫌っているわけではない。むしろ嫌悪感が生まれるのは、それが語られ方によって「関係性を壊す形」で提示されるときだ。
自慢とは、本来は事実の提示であるはずだ。しかし聞き手の側から見ると、それはしばしば「自分より上だと示されている」「評価を強要されている」という圧力として受け取られる。人は無意識のうちに他者との位置関係を感じ取りながら生きているため、一方的に優位性を示されると、自尊心が刺激され、防衛反応が起きる。これが反感の正体である。
さらに厄介なのは、自慢が「承認の要求」として機能してしまう点だ。本当に満たされている人は、わざわざ声高に自分を語らない。自画自賛が多い人ほど、「認められたい」「価値があると思われたい」という欲求が透けて見える。その瞬間、聞き手は対等な関係の相手ではなく、評価者の立場に引きずり込まれる。対話ではなく、査定の場にされることが、人を疲れさせる。
また、自慢は空気を止める。会話とは本来、流れと余白を楽しむものだが、自画自賛が始まると話題はその人の功績を中心に固定される。共感や発見の余地が狭まり、他者が入り込む隙がなくなる。その閉塞感が、「一緒にいて楽しくない」「関わりたくない」という感情につながっていく。
対照的に、同じ実績や能力を持っていても嫌われない人がいる。そうした人は、自分を主役にせず、経験を状況や学びとして語る。自分がどれだけ凄いかではなく、何が起き、何を感じ、何が役に立ったのかを共有する。その語りは相手の世界を広げるが、自慢は相手の世界を狭める。この違いは決定的だ。
自慢や自画自賛が嫌われる最大の理由は、それが「自分に意識を向けさせる行為」だからだ。人は誰しも、自分の人生の主人公であり続けたい。他人の自己賛美に長く付き合わされるほど、自分の存在感が薄れていくように感じる。その感覚に、人は本能的な不快を覚える。
結局のところ、評価は語るものではなく、滲み出るものだ。本当に価値のあるものは、無理に掲げなくても周囲が感じ取る。自慢が嫌われるのは、それが価値そのものではなく、不安や欠乏を露呈させてしまう行為だからなのかもしれない。
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