嘘や誇張は避けるべき理由
ssakamoto嘘や誇張は、短期的には自分を有利に見せたり、その場を切り抜けるための便利な道具のように思えることがある。しかし、人生全体の時間軸で見たとき、それらは確実に自分の足元を崩していく。
嘘をつくと、人は常に「辻褄」を管理しなければならなくなる。一つの嘘は、必ず別の嘘を呼び、その整合性を保つために意識の多くが奪われる。本来なら仕事や創造、学びに使えるはずのエネルギーが、記憶の改ざんや言い訳の準備に消えていく。これは精神的な浪費であり、長く続けば判断力や集中力を静かに蝕んでいく。
誇張も同様に危うい。事実を少し盛るだけ、期待を持たせるために大きく言うだけ。そうした行為は、周囲との認識のズレを生み出す。相手が抱いた期待と現実が一致しなかったとき、失われるのは成果だけではない。「この人の言葉はそのまま受け取れない」という評価が、静かに積み上がっていく。一度そう見なされると、たとえ本当のことを語っても、言葉の価値は下がったままだ。
さらに深刻なのは、嘘や誇張が自分自身の認識を歪める点にある。言い続けた言葉は、やがて自分の中で「事実のような感覚」を帯び始める。実力以上の自己像を信じ込めば、成長に必要な反省や修正ができなくなる。逆に、問題が起きたときも現実を直視できず、原因を外に求める癖がついてしまう。これは成長の停止を意味する。
信頼は、派手な成果よりも、正確な言葉の積み重ねから生まれる。できないことをできないと言い、分からないことを分からないと言える人は、一見弱く見えるかもしれない。しかしその姿勢は周囲に安心感を与え、長い目で見れば大きな協力や機会を引き寄せる。言葉にブレがない人の発言は、少なくとも「検討に値する」と受け取られる。
嘘や誇張を避けるべきなのは、道徳的に正しいからという理由だけではない。それは、自分の思考をクリアに保ち、現実との接地面を失わず、信頼という無形だが極めて強力な資産を守るための、極めて合理的な選択だ。静かに、確実に、自分の人生の可動域を広げていくために、言葉を事実に揃え続ける。その積み重ねこそが、結果として最も遠くまで往ける道となるだろう。
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