弱者のための護身術
護身術とは、力の強い者がさらに強くなるための技ではない。本来は、力の弱い者や体格に恵まれていない者が、自分の生命と尊厳を守るための創意工夫である。どれほど技を磨いても、暴力を真正面から受け止める必要はない。むしろ、生き延びるためには「正面から闘わないこと」こそが最大の戦略となる。
弱者の護身術の第一原則は、危険を予兆の段階で察知し、回避することである。夜道を歩くとき、背後の気配に注意を払い、距離を取る。見知らぬ人間に不自然な動きを感じたら近づかない。建物の影、車の死角、人通りの少ないエリアを避けるなど、環境の選択そのものが最高の護身術になる。強さとは殴り合いの能力ではなく、危険から遠ざかる能力でもある。
それでも避けられない危険が迫ったとき、弱者が取るべき行動は「最小の力で、最大の効果を生む動き」である。全力で抵抗しようとすれば相手の力の土俵に乗り、力負けする。しかし、相手の急所に対して適切な一撃を入れれば、たとえ小さな力でも状況を変えることができる。目、鼻、喉、金的、関節の曲がる方向とは逆側への力など、人体には必ず弱点がある。だが、これらを使うのは最後の手段だ。逃げ道を確保するための一瞬をつくり、素早くその場を離れる。それが弱者の戦い方である。
弱者の護身術は、日常生活における小さな選択にも現れる。誰と会うか、どこへ行くか、どの時間帯に移動するか、どこに立つか、どの店に入るか――これらはすべて「危険を引き寄せるか、遠ざけるか」を決める要素となる。弱さを悲観する必要はない。むしろ弱さを前提にしたとき、人は無駄な対立を避け、正しい判断をし、環境を整え、生存率を高めるという知恵が生まれる。
そして、弱者の護身術を語るうえで欠かせないのは「人ではなく、動物との遭遇」の問題である。その最たる例が熊だ。熊は人間とは比較にならない圧倒的な力を持ち、勝負以前の存在である。熊に比べれば全ての人間が弱者だ。ここでも重要なのは、戦う発想を完全に捨てることである。もし熊の生息地を歩くなら、まず音を出して人の存在を知らせることが予防策になる。鈴、話し声、手を叩く音――従来はこれだけで多くの熊は近づかなかった。だが最近はこれらが効かないとの話もあり、さらなる準備が必要だ。
突然遭遇してしまった場合、決して走って逃げてはいけない。熊は時速50km以上で走るという。背中を見せれば本能が刺激され、追われる。手は開掌で顔の高さ以上に上げ、なるべく大きく構える。これは顔面を守る意味と、身体を大きく見せる意味がある。
落ち着いて距離を取り、ゆっくり後退しながら熊を直視しすぎないようにしつつ相手の動きを観察する。直視しすぎると挑発と受け取られる可能性があるが、目を逸らしてもナメられる恐れがある。極力視野を広くし、気魄で負けてはいけない。一方、威嚇のために大声を出すことは逆効果の場合もあり、状況を見極めなければならない。
ヒグマに対しては特に慎重さが求められる。もし攻撃される寸前であれば、熊撃退スプレー(ベアスプレー)が事実上唯一の実用的な対抗手段になる。素手で熊を倒すなどという幻想は捨てるべきで、ここでもやはり「戦わずに生き延びる」ことを最優先にする。
弱者の護身術は、現実を直視するところから始まる。自分の身体能力、環境、状況、相手の性質――それらをすべて冷静に受け入れたとき、自分が取るべき最適な行動が見えてくる。それは決して「勇敢に戦う」ことではない。むしろ「最も臆病であることが、最も賢い」という逆説こそが、弱者を救う真理である。
自分の安全を守ることは、卑怯でも逃げでもない。それは自分の人生を大切にし、未来を選び取るという、最も主体的な行為なのだ。弱さを嘆く必要はない。己の弱さを知り、乗り越えようとする者こそ、真の強さを得るのである。
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