ダメな自分ではなく伸び代の塊
ssakamoto「自分はダメだ」と感じる瞬間は、誰にでもある。周囲と比べて劣っている気がしたとき、失敗を繰り返したとき、思うように結果が出ないとき。そうした感情は、できない自分を否定する声として心に響く。しかし、その感覚そのものを、まったく別の角度から見直してみる必要がある。
今うまくできない、結果が出ていない、未熟だと感じている状態は、「欠陥」ではなく「余白」だ。伸びるための空間がまだ大きく残っているという事実でもある。もし最初から何でもできてしまったら、そこに成長は生まれない。人はできないことがあるから学び、工夫し、身体や思考を更新していく。
多くの人が見落としがちなのは、苦手意識や失敗体験が、実は強力な伸び代の正体だという点だ。できないという感覚は、感受性が働いている証拠でもある。本当に危険なのは、「自分はもう完成している」「これ以上変わらない」と無意識に思い込んでしまうことだ。そこに至った瞬間、人は静かに停滞し始める。
成長する人と伸び悩む人の違いは、能力の差ではない。自分をどう解釈しているかの差だ。同じ失敗をしても、「やはり自分はダメだ」と解釈する人と、「ここに課題があると分かった」と受け取る人では、その後の時間の質がまったく変わる。前者は自分を削り、後者は自分を育てている。
未熟さを感じるとき、人はつい自分を責めたくなる。しかし責めるという行為は、問題解決にはほとんど寄与しない。それよりも、「まだ整っていない部分がどこか」「どこが動きにくいのか」と観察する方が、はるかに建設的だ。未完成であることは、恥ではなく、可能性の所在を示すサインなのだ。
伸び代の塊である自分を信じるとは、根拠のない楽観に浸ることではない。現実を直視しながらも、変化の余地を否定しない態度を持ち続けることだ。今日できなかったことが、半年後もできないとは限らない。今の自分は、過去の積み重ねの結果であり、同時に未来の途中経過でもある。
「ダメな自分」という言葉を使いそうになったとき、少し立ち止まってみてほしい。その言葉は本当に事実なのか、それとも単に現在地点を誤って解釈しているだけなのか。今見えているのは欠点ではなく、伸びる方向を示す矢印かもしれない。自分を切り捨てる材料ではなく、育てるための地図として受け取れたとき、人は静かに、しかし確実に変わり始める。
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