物造り大国から人創り立国へ
かつて日本は「物造り大国」として世界に名を馳せた。トヨタに代表される自動車産業、ソニーやパナソニックが牽引したエレクトロニクス分野、そして職人技の光る中小企業の精密加工──これらが高度経済成長を支え、世界中が日本製品の品質に驚嘆した時代があった。
だが時代は移り変わる。グローバル化の波は製造拠点を国外へ押し流し、技術の進化はAIやデジタル分野にシフトしつつある。かつてのように「良い物を作れば売れる」という時代ではない。価格競争にさらされ、労働人口は減少し、職人の技も継承が難しくなっている。我々は今、国家としての転換点に立たされている。
では、これから日本は何を強みにすべきか──答えは「人」だろう。知識や技術を持ち、それを柔軟に応用し、他者と協働し、未知に挑戦できる人。感性を持ち、倫理をわきまえ、自分自身の生き方に責任を持つ個人。モノの価値が相対化される時代において、最も希少で尊いのは「自主的に善く生きる人間」ではないか。
「人創り立国」への道とは、単なる教育改革ではない。学歴や偏差値では測れない、人間の器を育てること。試験に受かるための学習ではなく、人生を切り拓くための思考力や創造力、そして折れない心を養う。それは家庭、学校、職場、そして地域社会のあらゆる場において求められる姿勢であり、文化である。
物造りで築いた栄光は誇るべき遺産だ。しかし我々は、次の世代に「人間力」という財産を残さなければならない。テクノロジーがどれだけ進化しても、それをどう使うかを決めるのは、畢竟人である。すべての土台は人にあり、社会の未来もまた、人をどう育てるかにかかっている。
「物造り大国から人創り立国へ」──それは技術立国から精神立国への進化であり、日本が世界に果たす新たな使命なのかもしれない。
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(武術気功健康教室|大阪府四條畷市)